棄老伝説と「名月の里」で知られる長野県千曲市の「姨捨(おばすて)の棚田」の保存活動が、先細りに陥っている。都会の「オーナー」に農作業を体験してもらおうと棚田の貸し出し事業を行っているが、日常の管理を担う地元農家の高齢化が進み負担が重くなっているからだ。癒やしを求め応募は増えているものの、今年度のオーナーは前年度から2割強減らさざるを得なくなった。全国有数の棚田の行く末が懸念されている。
姨捨の棚田は、整備の難しさなどから耕作放棄が拡大。千曲市は96年から「棚田貸します制度」を始めた。市が棚田を借り上げ、首都圏などのオーナーに100平方メートル当たり3万円で貸し出し、田植えや稲刈りを体験してもらう。収穫は全量オーナーのものになり、棚田の保存も図られる。
自然志向の高まりなどで、オーナーは96年の17組から09年には過去最高の111組まで増加。稲刈り時期には家族連れでにぎわう。
オーナーが現地を訪れるのは平均して年7日ほどで、あぜ道の草刈りや給配水などの日常的な管理は、地元農家ら14人でつくる「名月会」が担ってきた。ところが会員の平均年齢は約70歳。オーナーの増加に伴い、名月会の負担も重くなったため、10年度は新規募集を09年度の48組から21組へと大幅に減らした。09年度からの「継続」も横ばいの64組に抑え、オーナーは08年度並みの計85組で、09年度に比べ2割強減らさざるをえなくなった。
市教委は新たな保存会を作ることも模索しているが、具体策は浮かんでいない。名月会の金井今朝男会長は「会員は自分の田畑も管理しなければならないので、これ以上の負担増加は限界」と嘆いている。【小田中大】
【ことば】姨捨の棚田
善光寺平を一望する姨捨山のふもとに広がる約1500枚の水田。春の夜は棚田の1枚ごとに月が映る「田毎(たごと)の月」で知られ、日本三大車窓の一つとされる。平安時代の「大和物語」には、信濃国更級の山へ老いた伯母を捨てた男が、思い直して連れ戻したことから「姨捨山」と名付けられたとの伝説がある。99年、全国の棚田では初めて国の名勝に指定され、2月には周辺64.3ヘクタールが国の「重要文化的景観」に選ばれた。
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